職業訓練制度は国が法律の元ガイドラインを定めているので、中間テストや最終の職人試験は州によって違いはあるものの、今では大体同じになっています。
(例えば他の州は職人試験に手縫いの底付を廃止したけれど、バイエルン州だけしばらく残っていた、など。)
連邦司法消費者保護省 連邦司法局
整形靴職人のための職業訓練に関する条例
とはいえ、ドイツ国内に医療用品店(Sanitätshaus 義肢装具の会社に整形靴部門がある所が多い)1469社、整形靴店(Orthopädieschuhmacher-Betriebe)は1973社(2015年統計)もあるわけですから、会社によって内容は全然違いますし、職業訓練生に与えられる仕事も変わります。
基本「下働き」というのは共通とは思いますが、、、
例えば私の職業訓練1年目
最初の3ヶ月はひたすらインソールの上敷き+裏張り接着
本当に掃除とこれだけ。ひたすら接着剤を塗り、乾かしてハサミで周りをカット。そしてそれを仕上げ加工に回す。
単純作業は好きですし、いかに効率よく・早く・綺麗に仕上げるか、を考えながらひたすら黙々と作業してました。
4ヶ月目に入ってからは既成靴の修理・加工の下処理で削られたソールの接着。
やっぱりひたすら接着剤を塗り、乾かし、プレスしてくっ付ける。
靴にはいろいろ素材の違いにより接着剤を変えなければいけなかったり下処理が必要だったりと、どのマテリアルにどの接着剤を使えば良いか、ということを学べました。
インソールの接着は並行して継続。
半年経ってようやく初めて靴修理をさせてもらえました。
記念すべき1足目はマイスターのお父さんの革靴のヒールトップリフト交換。
片方をお父さん(お父さんもマイスター)がお手本で見せてくれて、もう片方を私がやる。
トップリフトを剥がし→接着面をグラインダーで削って綺麗にし→接着剤を塗って乾かし→プレス→はみ出ている部分を革バサミで切り落とし側面にグラインダーをかけて綺麗に整え→側面にインクで色付け→ワックスがけ
そこから毎日修理をさせてもらえる訳ではなく、ヒールトップリフト交換が来たときにそれが私に回ってくる、という形でやっぱりひたすら接着とプレス。
それからまた1ヶ月ほど経ってからまたマイスターのお父さんの革靴のハーフソール。
革ソールに革のハーフソールを着ける、というもの。
少し丸みのある面をグラインダーで真っ直ぐ線を付けるのが難しい!
仕上げに熱コテで装飾し、「インクで好きに塗って良いよ」と言われたので、緑と赤のインクで模様を描いて仕上げ。遊ばせてもらって楽しかったです。
職人になってからだと時間に追われてなかなかこんな風に好きにはできないので、良い時間でした。
他一年目に与えられた仕事は石膏バンドでとった足型に発砲樹脂を流し込み、足形を取り出し、爪先を付ける、というもの。
私の一年目は週に二日の職業学校とこんな感じの工房の仕事で過ぎていきました。
ちなみに少しお給料も出るのですが、金額は15年前当時手取り323€(日本円にして約4万円ちょっと)でした。これも会社が税理士と相談してうまく社会保険料などが免除になる金額325€以下に額面金額を下げてくれてこの金額。何もせずそのまま規程の327€が額面金額だった場合、手取りは285€(約3万5千円)に。。。
この金額で生活はできません。私は田舎に住んでいたので、お給料で家賃と電話代を支払って終わり、という感じでした。食費その他は持ち出しです。
2021年現在、職業訓練生の最低賃金は550€。社会保険料などを差し引くと手取りは440€ほどでしょうか。大都市でなければやっぱり家賃➕αくらいだと思います。
日本から留学する場合は、社会保障の受給資格もありませんので、3年分の食費も用意しておく必要があります。
こんな金額でも健康保険や失業保険、年金保険には加入しているので、安心して医療は受けられます。
ちなみに全ての職業訓練生の月収平均は908€だそうです。給与の金額は職業によって違います。
そう、整形靴職人の給与水準は最低ラインなのです。。。
コメント