整形靴からみたヒール・かかとの意味

整形靴

かかと/ヒールとは、ボールガースに対してかかとを持ち上げる、形状の異なる成形部品です。

Orthopädietechnik / Günter Wellmitz 著

人の歩行には本来必要でないヒール。

機能性や服飾性から発展してきたものと考えられていますが、

「街にあふれる汚物をさけるため」というのはどうなんでしょう?

かかとだけ上げても前足は汚れるよね?と思ってしまいます。。

Wikipediaにも、『ハイヒールの起源は汚物を避けるためとは関係がない[2]。』

とあります。

では、ヒールは何のためについているのでしょう?

それが歩行に与える影響は?

ローヒール(4cm以下)・ミドルヒール(4cm以上7cm未満)の利点と欠点は整形靴の専門書(同上)によると、

利点

  • 地面から踵を持ち上げることで足が汚れることを防ぐ 
  • かかとが上がることで、足を運ぶための一定レベルの準備ができる
  • かかとを持ち上げることで、足内のせん断力(内部に生じるずれ)を減らす
  • 整形外科的に必要な諸要件(脚長差補正・突足 etc.)を効果的に変更および適合させることができる
  • 弾力性のある素材を使用すると、かなりの緩衝効果が得られる
  • かかとを上げることでアキレス腱の負担が減る
  • 上足首関節の領域を保護する
  • ヒールが高くなると姿勢が女性らしくなる
  • ヒールが高くなるほど靴が小さく見えるようになる(図1)

欠点

  • 常に足が尖足状態にされることで、ふくらはぎの筋肉とアキレス腱が短くなるリスクがある
  • 後足の保持が不安定になり、足が靴の先端に滑り込み、前足へのストレスが増大
  • 足の設置面が減り、安定性が低下(図1)
  • つま先が常に背屈状態になる(図2)
  • 足の背屈と屈曲に関与する関節の可動域が減り、筋肉の活動が減る
  • 足と靴の接地面が減り、前足部の横アーチへの圧力を高める
  • 高さが増すと、靴の関節が硬くなり、足首下部の関節の可動域が減り、足と靴の地面に対する適応がしずらくなる
  • 歩幅が短くなる
図1(引用:Orthopädietechnik / Günter Wellmitz 著)
図2(引用:Orthopädietechnik / Günter Wellmitz 著)

スニーカーやコンフォートシューズでも高くはありませんが2cmまでのヒールスプリングが設けてある靴が多いです。
(ヒールスプリングとは、下の写真のようにボール部を地面に付けた状態でのカカトの位置・高さです。)

整形靴でラストを制作するときも、見た目がきれいにみえるので、ヒールスプリングを入れて成形することが好まれます。

また、足の力の弱い人も多いので、ヒールスプリングとローリングソールを組み合わせることによって、さらに足を運びやすくするという効果も期待できます。

個人的には、裸足感覚の靴・ベアフットシューズを足を鍛えるために履いていますが、たまにヒールスプリングのある普通のスニーカーを履くと前足や膝への負担を如実に感じると同時に、「足が動かない」とも感じます。

ヒールスプリングがあることにより、関節可動域が制限されて筋力がいらない状態になったり、いまでは「推進力」を謳うスニーカーもたくさんあり、靴が本来筋肉が行っていた役割を果たしてしまうので、足の筋肉は益々使われなくなる、ということは、足に回った血流が心臓に戻されにくくなる、ということにもつながっり、むくみや静脈瘤のリスクもあがることになります。

1日の終わりには、アキレス腱を伸ばしたり、足裏マッサージ、足の体操をしたりして靴が持つ欠点を補っていくことが、足の健康寿命を伸ばすことになります!

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